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園長のひとりごと

こどもたちを見つめて ー2023年ー

2023年4月

令和5年4月1日。ついに統合園えみの森が開園しました。全園児38名と職員18名。同じく統合したえみの森学童クラブは登録人数が35名と職員3名です。東由利に一つだけの未就学施設。ここがまさに子育て支援の中心になります。永慶保育園・みどり保育園の職員が、こどもたちがどんな反応を示してくれるのか想像しわくわくしながら遊びの環境を整えて来ました。

お天気に恵まれた4月3日、やや緊張しながら登園してきた子が多かったのですが、お友達の姿を見つけたとたん、遊びの輪の中にすんなり入る事ができ保護者さんも安心して職場に向かったのでは無いかと想像しました。

「いま遊べ 未来につながるこの瞬間~ここに生まれてよかった 本物の自然の中でたくましく育て」を保育理念とし、この地域ならではの保育を展開していきます。まずは遊び込むこと。遊んで遊んで、遊びまくって、その中からこども自身が感じて考えて「人と関わる力」「自分の思いを表現し人の気持ちにも寄り添える心」「あきらめずにやり抜く力」を育てていきます。子どもたちが日々どんな姿で遊びまくっているのか、ぜひ見にいらしてください。しかも、子どもたちから元気をもらうことができますよ。

まずはえみの森、元気にスタートしました。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

認可保育園えみの森 園長 畑山玲子

2023年5月

永慶保育園・みどり保育園どちらのこどもたちも保護者の皆様も、誰もが不安に思いながら迎えたであろう「えみの森」開園初日の朝。不安な心で玄関に足を踏み入れたこどもたちが遊戯室の遊びのコーナーを見た瞬間に瞳を輝かせるのを見た。職員の設置した遊びのコーナーに興味を持ち、すんなりと遊び始めてくれた。まずは第一関門突破。 ずいぶん前から顔写真を貼って覚えようとしたこどもたちの名前。しかし「えーと…お名前誰だっけ?」と職員のみんなが撃沈。しかし、2週間もしたらさすがにみんながみんなを覚えた。やっと第2関門突破。 

4月は『本当の自分を見せてもらおうよ月間』とし、子どもたちの思いをできるだけ尊重して自由に過ごしてみた。箍(たが)が外されたようにやりたい放題のこどもたちの行動だったがそれは想定内。最初から生活のルールを教え込み慣れさせていくのは近道でいかにも落ち着いた生活に見える。しかしなぜそのルールがあるのかがわからず大人の指示に従うことを早くに覚えてしまうと、指示が無いと不安になってしまう。遠いところに置く大きな目標として『自分の人生を切り拓いて生きていける心のたくましさ』を願う私たちは、時間は掛かるが社会生活の入り口である保育園として責任を持って接していきたいとおもう。ルールが必要な事を理解すればこどもたちは応用しながらしっとりと過ごすようになるはずだ。夏を迎える頃にはおそらくその年齢なりの確かな成長を見せてくれるに違いない。それまでは職員もがまんがまん。それはダメ!!と頭ごなしに制止したい気持ちを春の空気とともにぐっと飲み込んで、ていねいに関わりながら、こどもたちの興味津々の瞳の輝きを最大のエネルギーにしてがんばっていきたいものだ。    園長 畑山 玲子

2023年6月

5月も後半になって園内の空気感も徐々にしっとりしてきている。そんなこどもたちの行動に合わせ少しずつ生活のルールを職員間で確認し合っている。それ、最初からするべきでしょ!とのお叱りを受けそう。しかし本当の姿を見せてもらったからこそできる対応だと思っている。生活の仕方も少しずつ変えている。適量の玩具、遊んだモノの戻し方、食事の場所、食後の過ごし方、昼寝の対応(年長児は寝ることを強要せず遊戯室で静かな遊びも可能だ。個々の気持ちに添っていきたい。)こどものやる気に添う遊びの提供など。 その一つが最近始まった年長児の自転車運転免許試験。試験科目の中には生活のルールを守ることも入っている。取得後のルール違反は大人と同じで免許停止もあり得る。自ら気持ちのコントロールができてくる年長児ならではの活動だ。免許取得はもちろん個人差があり恐らく取得時期は大きな開きが生じるはず。しかしその差は能力の高低ではないことを理解してもらいたい。むしろ興味の有無が大きく関わるので、自転車よりもやりたい遊びがあったらそちらに向かうことでしょう。目的は免許を取ることではなく、興味のあるものに最後まで向かえる心の醸成です。励ましすぎず、落胆せず、こどもたちのやる気が出るのを待ち続けたいものです。

試験官の私に「試験お願いします」と来たら最優先の仕事として年長さん個々に対応するつもりで心の準備を整えている。  

                     園長 畑山玲子

2023年7月

遊戯室から「せんせい、むしいるー!!」の叫び声が聞こえたのでこんな声で叫ぶくらいなら相当珍しい虫にちがいないと予測して駆けつけてみると、そこにいたのは、ハエ。確かに虫には違いないがこんなに身近な昆虫を「むし」と呼ぶことに軽く衝撃を受けた。専門的な知識を植え付ける必要は無いが、せめて子どもの活動的な時間に1番身近にいる私たちは一般的な表し方をしなければと思った。「メダカが餌を食べているね」「サルビアがきれいだね」「ピーマン採ってこようか」のように自身がわかる範囲で。「むしいるー!」と言われたらそれを否定せず「ほんとだ。ハエ飛んできたね。」くらいは返してあげたいものだ。

名前といえばとても面白いことがもう一点ある。自分をちゃん付けで呼ぶ子どもたちはなぜか圧倒的に女の子が多いこと。自分を「くん」付けする男の子がいないわけでは無いがそうそうお目にかかれない。その女の子たちも何かのきっかけか「ちゃん」を無くした名前で表したり「わたし」と言うようになるのだが、そのきっかけは何なのか注意深く見てみたい。 長新太:絵、谷川俊太郎:文の「わたし」という絵本があるが、主人公の「わたし」は親から見るとむすめ、先生から見ると生徒など、相手との関係性によって「わたし」の呼ばれ方が変わっていく様子がシンプルに描かれた興味深い絵本。今日のようなこんな気分の時にはつい手にとってしまう絵本です。 

                  園長 畑山玲子 

 

2023年8月

小学校の夏休みが始まり朝から学童クラブの子どもたち約20人が登園。縁側で検温後学童の保育室へ。涼しいうちに宿題をしその日の分を終わらせた人から遊戯室で遊ぶその流れが、子どもたちには好評だ。朝のうちに宿題を終わらせることがそのあとの遊びや体験にゆったりとした気持ちで入れるので、とてもにこやかだ。何と言ってもみんなで話し合って決めたこの夏休みの目標は「楽しい夏休み!W(わら、って言うらしい)」。映画館やパソコン、手仕事遊び、ちょっとぜいたくな製作あそびなど、工夫がいっぱい。しかし計画の中に学校等のプール体験は入っていず驚かれたことと思う。プールはぜひご家庭で連れて行ってもらいたいと節に願う。  プール遊びの危険について想像がつくだろうか。たいていの子どもはプールに限らず確かに水が好きで、水があると生き生きとして遊ぶ。

しかし仲間との遊びは楽しさと危険が常に隣り合わせでいる。はしゃぎ過ぎて危険な行為がどんどん、どんどんエスカレートしていく。水の中でたわむれ、はしゃぎ、もぐりっこの競争を始め、遊びの一つなのだろうが終いには他の子の頭を押さえつけて沈めようとする行為まで。支援員がいくら止めても水の中のそれらは無くならなかったと、昨年までの様子について支援員は話す。 ずいぶん弱気だと思われても仕方が無いが統合の今年は利用人数も多いなど懸念材料が多く、子どもの命を守りきれるのか自信が持てないことから、プールの事故を防ぐにはプールには行かないという決断をさせてもらった。子どもたちの大切な命を守る術は、中止しか無い事をぜひご理解いただきたい。それに変わる「楽しい夏休み!W」に向けここの環境を大いに活用し、たっぷりの遊び時間と貴重な体験を、工夫を凝らして行っていきます。プールは、ぜひご家庭でお願いします。

                  園長 畑山玲子

2023年9月

8月末にR5年度の県・市の指導監査通知が届く。保育内容の部分に「子どもの人権・人格を尊重しているか」が新たに加わり驚いている。身体的・精神的虐待やバス内の置き去り事件など保育施設内での事件を受けてと思われるが、その他にも日々の「子どもを尊重した保育」が重視されている。国連・子どもの権利委員会では、これまで「子どものために」と言いつつ子どもの思いを尊重せず大人が一方的に決めていたことの反省をあげているが、それを私たち保育現場に迫っているようにも感じる。 折しも今えみの森では職員全員でその点について確認し合っている最中だった。「子どもを尊重した保育」か否かは具体的にどんなシーンなのか。

例1)食事の前に排泄したらゆっくり食事ができるだろうとトイレに誘う職員。しかし子どもは「今は出ない!」と主張。その後食べている途中に漏らしてしまった。

「ほら、だから先生が言ったときに行けば良かったのに!」と、これ見よがしに他の子に聞こえるように言って傷付けるのか、「あらら…さっきは出ないと思ったのに今おしっこ出たくなったのね。」とそっと他の子に気づかれないように取り替えてあげるのか。 

例2)大好きな外遊びがまだ遊び足りず「もっと遊ぶ!!」と大暴れ。「もう終わりです!みんなと一緒に中に入る時間だよ!」と「みんなと一緒」を強要するのか、「時計の針が10を指したら給食の時間になるけど、どうする?」と子ども自身に時間の見通しを持たせるか。これだけでも子どもの考える力の育ちにつなげられる。

これはほんの一部に過ぎないがこれらの連続が子どもの権利を尊重する保育であり、子ども主体の保育になる。子どもを傷つけずに思いを汲んでやるのは、意外と難しい。そもそもおしっこは子ども自身の感覚に任せるとトイレでの排泄が自然に上手になる。他の子を意識する年齢になればみんなと一緒が楽しくなるし、時間の見通しと共にすんなり切り替えができるようになる。子どもの心を押さえつけず傷付けず、子ども自身の経験から身につく保育を心がけたいものです。  園長 畑山玲子  

2023年10月

朝方の雨で東由利体育館での開催となったえみの森初の運動会。当日の朝は保護者会の役員の皆さんや東由利総合支所の方々が会場準備に汗を流してくださり、無事に開会の運びとなりました。皆様に感謝申しあげます。東由利地区内でのコロナ情報もあったため、換気や時短に努めましたが、開催のねらいとした「観るだけから参加型の運動会へ」は、プログラムも父・母などの限定を外し「大人」の表記にしたり、運動が苦手な子どもも大人もみんなが楽しめる運動会になるよう工夫してみました。ご来賓の皆様もゴールテープ係や時には審判になって戴き、それこそみんなが参加型。その中での1番の主役の子ども達も、思い通りにならなくて泣くことも先生の手を煩わすことも含め、普段通りのお子さんの姿を見せてくれたと思いました。とりわけ輝いていたのが年長児そら組12名の子どもたち。年齢的にも「良いところを見てもらうぞ!」の意欲は5歳児ならではの発達からくるものです。その様子を見ていた4歳児以下の子どもたちが間違いなく年長児から刺激を受けたので、来年度はどんな挑みかたをするのか楽しみなところです。

9月後半は休み無く誕生会が続きました。その日はその子だけの誕生会。朝から誇らしげに過ごすその日の誕生児を見ていると、どの年齢の子も一つ大きくなることへの誇りと共に自己肯定感の育ちを感じます。やっぱりひとり一人の誕生会を行う事には大きな意味を感じます。運動会でも皆さんから認められ、秋の実りと共に子ども達の確かな育ちを感じる嬉しい9月でした。    園長 畑山玲子

2023年11月

えみの森近辺にも熊出没情報がひんぱんになりつつあるなか、子どもたちの命を優先し外遊びの場所と時間を制限する日々を送っています。暑い夏に引き続き制限され、広い園庭で思う存分のびのびと遊べた時期がそう多くない今年ですが、仕方がありません。熊の怖さを子どもたちに伝えた時には私の伝え方がリアルすぎたのか、学童クラブの小学生でさえ泣いてしまった子がいるほど。こうなると山歩きや八塩山登山ももう無理ではないかと職員で話し合っているところです。 しかし秋の実りはさつまいも・里芋・はさがけ米・落花生など、園庭や畑での収穫で十分に実感できています。これからはネギ・大豆・小豆・大根とまだまだ収穫できます。子どもたちが嫌いなネギも、工夫次第では甘くて美味しい食事に変わります。収穫したものを使って野菜が美味しい食べものに変わっていく過程を、調理に携わりながら知っていく機会を作っていきたいと思っています。まさに生きる力にもつながりますよね。 厚労省から出されている「保育所における食事の提供ガイドライン」にも、子どもの成長・発達に合わせる、季節感を取り入れる、行事を通して食文化に触れる、など、多様で美味しいメニューの展開が求められています。一方でひとたび誤嚥の事故が起きる度に給食に提供できない食材が増えていくのは気になります。堅さや刻みも「これ離乳食?」と思えるほど細かな指示が国から出され、なおかつ咀嚼力をつけるように指導され…。誤嚥の事故はあってはならないけれど、きのこがきのこと気づかないほどの刻みかたを指示される中では、子どもたちの食生活が豊かになり得ない怖さを感じてしまいます。園長 畑山玲子

2023年12月

「そこに愛はあるんか?」でおなじみのCMを見る度に必ず思い出す先生がいる。愛知県にお住まいの飯田和也先生は、笑顔の素敵なそれこそ愛にあふれている先生で、この園にも何度かおいでくださりご指導くださった保育にかけての第一人者だ。多くの著書の中で代表するものとして「一人ひとりを愛する保育」があるが、この本を読むと心がほっとする。

子どもがやること全てをどうぞご自由にとさせることは放任だ。しかし発達を見抜き愛をもって見守っていくことで、その行為を止めるべきか認めるべきかがその子の成長の理解とともに面白いほど見えて来る。子どもの行動には必ず理由があって「困った行為」に見える事も実は本人が「困っているサイン」であることにも気づく場合が多い。大人側の思い通りに子どもを支配する保育の中からは、到底わかり得ないことだ。大人の指示に従い続けることで主体性が徐々に削られていく怖さを職員みんなで確認し続けて行きたい。

先日行われた「おたのしみはっぴょうかい」では、教え込まれるのでは無く自分なりの表現を楽しむ子どもたちと、それを十分理解して認めている職員の姿が随所に見られた。そしてそこにはたしかに飯田先生のおっしゃる愛が感じられた。

著書の中にこんなフレーズがある。「『がんばってもがんばってもできない。もうこれ以上はダメ。もう助けてほしい。』といったサインをだしているときに励まされることほど、『やるせない』と子どもは感じていることを理解することです。」   園長 畑山玲子

2024年1月

所用でお昼に出勤したその日、よく職員室にやってくる3歳児が「園長先生いなくて心配してたよ」と。3歳にしてその優しさを言葉で伝えられることにも驚く。

4月に統合した頃から夏ごろまでは「永慶保育園ではね…」とえみの森との違いを比較して語る4・5歳児がいた。そして「また永慶保育園で遊びたいな…」と続く。それから数か月。最近その言葉はあまり聞かれなくなり、逆に「えみの森がほんとに好きになった」と言ってくれる。どこが好きなのか探りを入れると「おもちゃがいっぱいある」「先生があんまり怒らない」「いっぱい遊べる」「友だちをテレビ(監視カメラのモニター)で見られる」など。      

子どもたちが事務室に自由に出入りできるえみの森。やや保健室的なところもあって、心の休息にやってきたり、ちょっとした逃げ場になっているのを感ずる時もある。重要な書類が出ていたり来客で入られないときはあるものの、上記のこどもたちの素直な気持ちが聞かれることや、事務室ならではの成長が見えることに、やっぱりこれは辞められない。メダカのエサやりを率先してやる子、ヘラクレスオオカブトの健康状態を見にくる子、ふらっと一回りして私の机の上のラーメンのペーパーウエイトを見て出て行く子。そのひとり一人の気持ちの奥底を覗かせてもらいながら、今年度残りの3か月、事務室にいるからこそのの特権として、こんな豊かな時間を楽しみたい。   園長 畑山玲子

2024年2月

雪穴のローソクの灯りってなぜこんなに人の心を癒やしてくれるのかな…。雪不足の中でも用務員さんの力を借りて根性でおこなった今年のミニかまくら。ローソクの回廊に歩を進めると、日の入りと共に暖かみのある色に変わっていく灯りと子ども達の歓声に心地よく包まれた。

旧みどり保育園でミニかまくらを始めたのは平成の中頃だったと思う。この年が始まりと言えないほどのささやかな始まりだった。最初は水神様をまつる小さなかまくら一つが玄関先にあっただけ。年おうごとに雪の壁に穴を掘ったミニかまくらの数が増えていき、手作りローソクを作るようになり,その数も増やしていった。大人の背丈を超えるほどの雪が当たり前だった。平成の終盤には甘酒のふるまいも定番になり、地域の方々も見に来てくれるようになった。「この甘酒さ、砂糖なんぼ入ってる?」と聞かれるほど、松沢の小松真子さんの甘酒は甘くておいしい。もちろん砂糖は入っていない。

ここまでミニかまくら続いているのは、そこにたしかな願いがあるからだ。ミニかまくらの灯りや甘酒、そして普段は外遊びをしない夕刻の薄闇の中での非日常のひととき。これらが子どもたちの心の中に「郷土愛」としてつながる大切なものが芽生えると,私たちは信じているからです。   園長 畑山玲子

2024年3月

ちびっこハンター(笑)の襲撃から守るため事務室で飼われているヘラクレスオオカブト。興味のある子ども達が毎日観察にやってきては様々な声掛けをしていく。ごはん食べた?何色のゼリーがすき?まだ眠いの? ケースをつつきながら元気度を確認している。手のひらに乗せている子もいたが、強力なあごは噛まれたら指に穴が空くらしいので、遠慮してもらっている。常連の子が“告白”していた。 『ヘラクレスってかわいいな~ だいすきだよ ぼく ヘラクレスのことをかんがえると からだがふるえてくるんだよ だからまいにちあいにくるね』  数ある図鑑や絵本、テレビ・PC・スマホのディスプレイからは読み取れない,本物からの感動をその子は毎日感じているに違いない。園児でも興味のあることを調べる手段を持ち合わせ、知識欲に応えてくれる便利な世の中になった。そこに本物に触れる機会の体験でもっと心の感動につながるはず。

令和5年度は異常な暑さの夏、熊出没の情報、両園とも経験の無かった感染症の連続などに翻弄され、本物に触れたいという子どもたちの願いに十分に応えることができなかった。多くの園外活動も計画倒れを余儀なくされた。令和6年も暑い夏の予報が出ているが、予想外れを願いつつも今から十分な対策を考えなくては。

まずは今年度も残り一ヶ月。子どもたちにとって充実した一ヶ月にしなくては。

                             園長 畑山玲子

子どもたちを見つめて ー2022年ー

2022年4月

なごりの雪がまだ残る園庭にも春到来の暖かな風が吹きわたる本日、3名の新入園児を迎え令和4年度がスタートしました。4月途中からは更に2人のお友達が入園予定で、18名での生活が始まります。保育の理念を「いま遊べ 未来につながるこの瞬間」とし、遊びの中からの学びを重要とする保育にて今後も特に郷土愛につながる体験を楽しんでいきましょう。洗濯物が増えても多少のほころびを作っても「よく遊んできたね!」と認めてくださるご家族のなかでは、きっと子ども達も十分に自己発揮できることでしょう。子どもからの毎日の報告を楽しみにしていて下さいね。

 さて今年度は令和5年4月1日の施設統合を見据えてこの4月から少しずつ準備に入りますよ。永慶保育園のお友達との交流はいつもの年よりも多くなります。出向いたり迎えたり、多様な毎日になることでしょう。 コロナ禍で地域の皆様との交流もすっかりご無沙汰していた2年間でしたが、今年度は感染予防対策を工夫しながら、無理なくお付き合いできるようにしていきたいと考えています。 雪が融けたらさっそく地域の皆さんの憩いの場所を、旧ゲートボール場に設けます。と言っても園にあるテントを張るだけのスペースですが、そこから子ども達との交流をしていきましょう。お迎えのご家族もちょっと一休みできます。もちろん縁側もおおいに活用しましょう。作って食べる体験、知的好奇心を満たせる環境、終わりの時間にとらわれすぎない遊びの時間の確保。そのために私たちは子どもの思いに寄り添える保育者集団で居続けたいものです。さあ、みんなー、今年もいっぱい楽しむよ-!  園長 畑山玲子

 

2022年5月

新年度が始まって早くも1ヶ月が過ぎようとしていますが、毎年ながらこの時期は子ども達も職員も新年度の喜びと共に、実はちょっぴりそわそわしながらそれぞれの春を過ごしているのを感じます。大人の落ち着かなさを察してか大人の願いもむなしく子ども達は「困ったちゃん」になりがち。泣いたり妙に甘えたり、我を通そうとしたりお漏らしの回数やケンカが増えたり・・・。でもそれは当たり前のことで、やがて陰をひそめますからあまり心配せずに見守っていきたいものです。ただ、心配なことがあったらぜひお話しください。私たちができることは何でもお手伝いしたいし一緒に考えていきたいです。逆に私たちも「助けて」と保護者の皆様にお願いすることも出てくるかもしれません。今後もお互いに補い合える関係を続けていきましょう。

 職員駐車場のそばにできた地域の皆様のスペースは、時々利用される方がとても和んだ表情で子ども達を見て下さいます。敷地内に入らなくても外側から園庭を眺める方もおいでです。初めて来てみたと話す旧下郷地区(懐かしい呼び方ですね)の方もいて、とても嬉しいです。園庭は歩いてみないとわからない心地良さがありますので、ぜひおいで戴きたいものです。コロナ感染症の対策をしつつ、コロナと上手に付き合いながら交流していきましょう。そして保護者の皆様と同様地域の皆様ともお互いに「助けて」と声に出し合える関係でいたいものです。まずは子ども達の声を聴きながら間もなく満開を迎える園庭の八重桜を眺め、子どもを真ん中にして大人も穏やかに楽しんでいきましょう。    園長 畑山玲子   

2022年6月

【「もうお家に帰ります!」と靴を履いて外に出ようとするA。追いかけるそぶりすら見せず「はい、どうぞ」と見送る担任。時は給食の時間。もちろんお迎えの人もいない。一旦外に出たAは担任が追いかけないことに不安を覚えたのかすぐに戻って来た。】これを「あらーかわいそう。先生たち冷たいね」と思われる方が大半でしょう。しかしこのシーンの前の出来事を知ると、どう思うでしょう。【食事を前にしても自分では食べようとせずふざけながら大人の手伝いを求め続ける。ま、そんな思いの時もあるだろうと、少しずつ口に運んで手伝いながらも、食具を使ってまずは食べてみようとすることを願う担任。方や何とかして全て食べさせてもらいたいAとの駆け引き開始。それからはAのマナー違反のやりたい放題が始まる。献立に文句を言いはじめしまいには立ち歩くAに、食べないなら食器を片づけることを促すと、文頭の行為に及んだ。】私たちが保育のねらいとする「生きる力」とは、周りの人を誰でも自分の言いなりになる人と見なし自分の思うように操ることを助長させることでは無い。自分のできることは自分でやっていくことに意味があり、そのちょっと窮屈なことや面倒くさい事の繰り返しにおいて相手のことも理解できてくるし、生きていく力もついていく。食事に限らず、挨拶、ものの片付け、友だちとのやりとり、これら全ては他の人とうまく折り合いを付けていく術を見に付ける学び。だから私たち保育集団は、時には「あらー、かわいそうだごと」と思われる行動に、敢えて出るときがあるのです。

  園長 畑山玲子          

2022年7月

やっと、ほんとうにやっと行うことのできた両園の保護者&子ども達の交流会。コロナも下火になった上、心配されたお天気も週間予報を覆して最高の園庭遊び日和となりました。両園の親子さんがみどり広場を楽しんでくれている様子が見られ、何よりの喜びでした。早くも名前を呼び合って交流しながら遊ぶ様子も見られましたね。永慶保育園の親子さんに関してはまだお名前もお顔も、そしてご家族の構成もよくわからない私ですが、園内に貼らせてもらった永慶保育園のお子さん達の顔写真を見ながら、一日も早く名前を覚えていく覚悟を決めました。

 永慶保育園長と共に初めて皆さんに合併と統合をしなければならない理由を口頭でお伝えしましたが、おおむね御理解いただけたと思っております。今後はこれからの東由利の子ども達の教育・保育を保護者の皆さんと一緒に考え続けたいと思います。

 いま日本の将来を考えたときに、未就学施設の教育の根幹として、第一に「子ども主体の保育」が挙げられています。子ども自ら遊び込むことから始まる「子どもの生きる力の育成」に、私たちも東由利の子育ての核となって取り組み続けたいと思います。認定こども園になるための秋田県幼保推進課からご指導を頂く研修が7月4日から始まりますが、合わせて今年度はみどり保育園に外部の方がおいでくださる機会が大幅に増えています。そんなときに誰からとも無く発する子ども達の「こんにちは!」が、元気な未来を表しているようで、最高です。

              園長 畑山玲子

2022年8月

施設の統合とこれからの運営について細かなことが決まりつつあり、先日の法人理事会においては統合園の名前も決まった。恐らく賛否両論あるだろうが、毎日日中の活動的な時間を子ども達と共にしている両園の職員の思いを、ぜひご理解いただきたいと思う。『えみの森』になっても子ども一人一人の育ちを保護者と共に職員一同全員で考え続けて行きたい。

 このところみどり保育園の環境で子どもを遊ばせてみたいという理由でおいでくださる親子さんが増えている。そんな時の子どもさんはまずは小川にて水遊びを始めるか田んぼの2Mほどの土手を下って蛙等をつかまえるか、カナヘビのすみかをくまなく探し回る。子どもはなぜか水と生き物にとても興味を示す。先日は形の違う器を並べて水を入れ替え「あれ?足りない。あれ?おかしい。」と言わんばかりに何度も試すお子さんがいた。きっとこの遊びは器と体積の関係について小学校の算数につながるに違いないね、とお母さんとお話ししたが、あながち間違ってはいないと思う。しゃがんでいたその子のお尻はすでに小川の中だったが、着替えがあるから大丈夫と笑顔で眺めていたお母さんの表情が優しかった。

コロナ感染の状態によってはお断りすることもあるが、縁側をベースにした外遊びを基本とする外部の方の来園を、ぜひお許し願いたいところ。毎日少人数で生活しているみどり保育園児にとっては見知らぬ人との会話や初めてであうお子さんとの遊びは社会性の育ちに大いに役立つので、これからも迷わず受け入れようと思っている

 園長 畑山玲子

2022年9月

秋の気配が感じられ園から見える景色の色も緑と黄のグラデーションに変わりつつある。このところ季節の移り変わりに追いつかないほど気ぜわしい日々を送ってしまい残念な私。せめて事務室から飛び出して子ども達と秋を十分に楽しもうと思っている。  さて、子ども達は今の季節をどう感じているのか。毎日外で遊んでいる中で、園庭に生えてくる草花の生え変わりや出現する虫にて季節の変化に気づいている子もいる。一方、最近登園直後の自主的な遊びにおいては外遊びや小川遊びがめっきり減ってきた。「肌寒いね」「朝はすずしい」「小川の水が冷たくなった」などと報告してくれる様を見ると、きっと秋を感じている。そのうち稲刈りが始まると「秋のにおいがする」と言うに違いない。そんなことを思いながら耳を澄ますと、縁側の鈴虫が子ども達の発する生活音の隙間に素敵な音色を響かせてくれるのも、なんとも豊かだ。  本日8月29日、少し早いが園のおじさんがみどり広場に手際よく稲架(はさ)を結ってくれた。昨年のことを覚えている子ども達は1~2段目まで昇りながら稲刈りを楽しみにしている。これから大人になるにつれ子ども達は作り物で溢れる時代を生きていかなければならない。ややもすれば本物の自然に彩られた生活は今しか味わえないのかもしれないと思うと、贅沢で今が幸せな時なのだと思う。 10月から始まる「保育遊学」に東京にお住まいの親子さん4組の応募があったが、理由で多かったのが「子ども達に本物の自然の中で過ごす体験をさせたい」とのこと。季節は秋。構えず普段のみどり保育園を体験してもらおうと思っている。都会の皆さんにはそれだけで毎日が楽しいイベントになるに違いない。 
           園長 畑山玲子


 

2022年10月

令和4年9月17日(土)、1・2年生有志と共に4・5歳児の奏でる「みどり太鼓」で幕を開けたみどり保育園としての最後の運動会。コロナ禍にありながら沢山の皆さんが参加して下さり、子ども達と共に心地よい汗をかいて下さいました。何度出ても良い綱引きやスカートでも参加できる保護者の種目は、子ども達の声援も飛び交い楽しかったですね。ご来賓の皆様にも審判など一役買っていただき感謝しております。子ども達の健やかな育ちと今後の確かな施設運営を祈念した紅白のもち撒きまで滞りなく行うことが出来ました。この63年間、ずっと地域の皆様に支えられここまで来られた事に感謝の気持を更に膨らませました。
当日の午後、袖山の畠山三郎家に赴き「大戸」をいただいてきました。雄征くんのご家族、ひかりちゃんのお父さんのお力と、園の環境をずっと手がけてきて下さった大工さんにも同行願い、無事に縁側に据え付けられた赤褐色に光輝く大戸は、まさに玉米村・東由利町・由利本荘市東由利の歴史を見つめてきたものであり、きっと今後も東由利の子育て支援の拠点であるこの地で子ども達見守って下さるに違いありません。 秋田県内の保育施設の運営に関する最新のアンケートでは、今年度約4分の1の施設が定員を下げたことがわかりました。それだけ子どもが少ない現実はしっかり受けとめつつも、私たちが出来る事を見つけがんばらなきゃと、あの日餅を撒きながら、そして今、毎日畠山家の大戸に触れながら祈るように思う私です。
          園長 畑山玲子 

2022年11月

由利本荘市移住支援課の事業である「ゆりほん保育園遊学」にご参加の4組のご家族は、申し合わせたように「迷わず即申し込みました」「移住体験をしてみたかったのです」と。そして、子どもの力を信じ見守りながら生きる力を育てようとしているみどり保育園の保育を評価して下さった。東京にお住まいのご家族にとってはこの地域の農業体験も新鮮だった様子。都会の便利さと都会だからこその不便さをひとしきり語り続けたお父さんもおいでだ。逆に「東由利の皆さんがこの地の良さと豊かさに気づいていない気がする」と分析して下さった方もいる。いずれ、園長としては忙しい日々ではあったが楽しい1ヶ月間をすごさせてもらった。それぞれの人生観や子育て事情を語り合い、私たち職員にとっても視野を広げられ多くを学ぶ機会にもなった。短期間ではあったが新しいお友達ができた喜びで今までに見せることの無い社会性の育ちを表現した子もいた。

「また来たい」ではなく「また来ようかな」との言葉を残して皆さん日常に帰られたが、私たちは4組の皆さんが残してくれた言葉のピースを組み合わせ、自分たちの保育に足りないものを探しあて、今後の保育のヒントにしていくつもりだ。

 

          園長 畑山玲子          

 

2022年12月

教えられた通りに踊り台詞を言ったら「すご~い!上手だったよ!」と私たちは褒めたくなる。しかしここ近年のたのしみ会は重点を別に置き、自分の思いをいかに表現しようとするかを見届けている。大人から投げかけられた言葉を理解して自分の思いを語る。それらのつなぎ合わせで、見ている側は「劇遊び」を楽しみ、子どもは「ごっこ遊び、楽しかった」の思いを残して一つのものができあがっていく。

担任が一人の子に関わっている間に他の子ども達だけで大きなカブを抜き終わって大笑い。毎日のごっこ遊びが同じストーリーになったためしがない、行き先未定の遠足ごっこ。ジャングル探検と鉄棒の組み合わせで独自に「なまけもの」をしてみせるシーンはあっぱれだった。ストーリーキューブで一人ずつのお話しを紡いでいく、サイコロ任せの運命物語。得意な製作作品の工夫どころを自らの言葉で自信を持って伝えてくれた。どのクラスも紹介する担任とのやりとりが子ども達の自己肯定感を育てることに繋げられ、子どもと大人の信頼関係が抜群だったと振り返る。

私たち大人が経験の少ないグローバルな社会を生きていくであろう子ども達にとって、大人の指示を待ちレールの上を歩んでいくのか、臆せず自らの生き方を模索する人になれるのか、その分岐点が今にあるとしたら、子どもにとって社会の最も身近にいる私たちの責任は大きい。そのために私たち職員が自ら手本になれるよう、自らの考えをもっともっと伝え合う毎日になれたら最高。そんなことを確認したみどり保育園としての最後のたのしみ会だった。

          園長 畑山玲子 

2023年1月

元気に動く度に下着シャツがひらひらの女の子。気候の良い時期ならともかく冬は寒いだろうし、なにより身だしなみとしても見苦しい。その都度声を掛けても秋頃はなかなか身につかなかった身だしなみが、真冬の雪景色に導かれてか最近は私に背中を見せて「ほらっ!」ときちんとしまわれているシャツを見せてくれるようになった。私も思わずその背中に指で花丸を書いてやる。そんな日をすごしていたらシャツがひらひらの他の子に「出ているよ」と声を掛けてくれるようにまでなった。なんだか嬉しいな。  「ズボンからシャツ」に限らず子どもたちはちょっと教えると自然に身だしなみに気をつける習慣ができてくる。おやつ後の口の周りを鏡で確かめてウエットティッシュで拭いている光景もよく見る。1歳児までもまねて、自ら鏡に向かって行く姿は何ともかわいらしい。それらが仮に大人の手を借りないと届かないところにあったらどうか。きっと子ども自ら行動に移す気持ちは失せるはず。子ども自身が思ったことがすぐに行動に移せる環境にしておくことは、私たち職員の大事な仕事。その観点で園内を見回すと子ども目線の工夫が随所に見られ、それが子どもの自己肯定感の育ちにもつながる職員のアイディアに拍手したくなるし、保育の仕事のやりがいもここにある。  さて、新年も子ども達に負けないように身だしなみに気をつけつつ、ここは子どもを中心とする子どもの生活と教育の場であることを念頭に置いて、新園の保育が充実するように職員と力を合わせてがんばりたいと思う。

 

          園長 畑山玲子

2023年2月

1月も中旬になってやっぱりやってきた大寒波。夜の間に建物が冷え切ってしまうことでそれを実感する。しかしそんな中でも子ども達は元気に雪野原に飛び出していく。冬の初めは苦慮した防寒具も徐々に着るのに慣れて手際よくなっている。

その防寒服や防寒具。昭和50年代はお母さん手縫いのはばきが良いところ。平成の初め頃はセパレーツ形のスキーウエアからつなぎの形のものが増え、最近は裏地もふかふかの、まさに「防寒」に優れたものへと変わってきた。

防寒がきちんとしてきたこともあってか、先日行われたミニかまくらの2日間は 学童クラブの小学生も含めなんと1・2歳児までも、刻々と迫る夕闇に反比例して輝きを増すローソクの幻想的な明かりに見守られながら、トンネル山から滑り降りたり雪玉を投げて走りまわったり、ついに月がきれいに輝く頃まで遊んでいた。その様子を眺めながら、かつて私が子どもの頃に随分暗くなるまで近所のお兄さんお姉さん達と群れて遊んだ光景がよみがえって懐かしさすら覚えた。年齢の違う子ども達が群れて遊び大人も楽しんで見守る素敵な光景だった。このひとときの体験が、目に映る風景が、子ども達の心の根っこに生き続けてほしいなと思った日だった。   園長 畑山玲子

2023年3月

統合が迫るなか永慶保育園・みどり保育園両園の保護者においでいただいての説明会が学童クラブを皮切りに始まっている。みどり保育園の保護者さんは当園の環境に慣れているので余裕の参加を感じるが、永慶保育園の保護者さんもにこやかに聞いてくださっていてありがたいと思っている。園舎が無くなる事へのご不満や送り迎えに時間が掛かること、勝手が違って大丈夫かなと、おそらく心配なことが沢山あるはずなので職員一同で少しでもその思いを払拭していただくために、丁寧に説明やお答えをしていくつもりでいる。 先日行われた学童クラブの説明会ではあえて駐車場係を買って出てお迎えした。車内から飛び出してくる小学生や年長さん達が嬉しそうに園舎に向かって走っていく背中に「あぶねど~!」と叫ぶ母さん達の声も追いつかないほど。それだけ子ども達の期待度を感じてこちらも感動だった。壁に張り付けてある約80体の身長10㍉ほどのミニチュア人間を探し始めるなど、早くもみどり保育園舎の楽しいからくりに気づいていた。この期待に応えられるよう子どもたちの反応に合わせて、生活空間について職員と智恵を出し続けたい。

63年間続いたみどり保育園の歴史に幕を下ろすところではあるが、まずはみどり保育園最後の卒園式は全園児・全保護者で、たったひとりの卒園児の未来を祝したいものだ。

              園長 畑山玲子

子どもたちをみつめて -2021年ー

2021年4月

あんなにあった雪の山が暖かな春の日差しに照らされて姿を消しつつある本日、

17名の子ども達と共に新年度が始まりました。

登園直後の8時半にはすでに自分の目指す遊びに目を輝かせて取り組む子どもたち。製作コーナーで廃品でのバック作りに格闘の5歳児男児は持ち手のバランスを取るのに創意工夫中。積み木コーナーで家のようなものを協力して作っている年長女児2名。その傍らでは小さな手でアーチ型の積み木を真剣に並べている2歳児男児の姿がある。目を離さずに付いて歩く職員の先には、歩行がしっかりしてまだ日の浅い1歳児が興味の赴くままあちらこちらを探索中。色々なものに触れては、驚くことにその物を元に戻し、すでに片付けの様子を見せている。縄跳びの二重跳びに挑戦中の新一年生のそばには何人もの子どもたちがすでに上半身下着姿になって負けじと跳ねている。

自分の思いを受けとめてもらえるからこそ、子どもたちは生き生きと遊べているのです。今年度も遊び込める時間と空間をしっかり確保し「ここに生まれてよかった~本物の自然の中でたくましく育て」を保育の理念とし、怖いウイルスの感染予防に努めながらも多くの体験を積んでいく一年にしたいと思います。子ども達の育ちの中で保育園でなければ身につきにくい社会の中で生きていく力を、遊びの中で、この環境の中で育てて行くために、保護者の皆様との連絡を密にしながら15名の職員で、責任を持って保育に当たりたいと思います。今年度もどうぞよろしくお願いします。園長 畑山玲子

2021年5月

日本保育協会北海道・東北ブロック「過疎地域対策委員会」のたった一人の秋田県代表になっている私は、他県の代表の方とZOOMで何度も会議を行っている。どこも道県庁所在地を中心に待機児童がいる一方で、この地のようなところは急激な少子化に対し危惧と恐れを抱くなど2つの局面を併せ持つ。少子化に於いて、秋田県は北海道・東北ではもちろんのこと、全国でもダントツの不名誉な一番を走っており、この東由利においてはその秋田県の中でも更にトップクラスにいることがとても残念でならない。しかし、それを嘆いてばかりはいられない。いま東由利においても二つの保育園の維持よりも園を一つにという検討に入っている。子どもたちの教育・保育のためにどんな方法が良いのか模索しつつ、併せて保護者の皆様へ適切な子育て支援のありかたを考えなければならない。少子化にブレーキを掛けることは困難だが、せめて東由利の子ども達の郷土愛に満ちた生きる力を育てる教育・保育を、保育現場から発信していきたいものだ。

雪で折れた太い桜の枝は屋内に入れられぬくぬくと過ごし、すでに満開のかすかな芳香を放っている。一方自然の気温と雨風にさらされている外の桜はかなりの開きを見せ、今ようやく堅かったつぼみを膨らませ始めた。歩みはゆっくりでも地道に咲こうとする桜は、屋内の桜よりもきっと本物の色を見せるに違いない。急がず慌てずその子らしい花が咲けば良い点は、つい、子どもたちの成長と重ねて見てしまう。    園長 畑山玲子

2021年6月

最近は施設長研修の中で特にマネジメント研修中「働きやすい職場にするには」のテーマでグループ討議をすることが多い。そんなときに私は真っ先に「休みやすい職場」と答えるのだが「不真面目に働いてと言っているようなものだ」と失笑されることがある。そんな意見があっても自身の考えを変えるつもりは無い。人間、アクセルとブレーキの使い分けは生きる上で必要だから。ところで担任制をとっている当園。担任が休みの日の子どもたちへの影響はどうか。全職員が子どもたち全員をある程度の発達まで把握しクラスの枠を超えた保育をしていくため、日々のミーティングは怠らずにやっているつもりでいる。こんな保育のためか個別な対応が必須の0・1歳児は別として、成長と共に子ども達も担任に固執すること無く良い雰囲気で大人と関われているように思う。これは、これから生きていく上で子どもにとっては他の人と関わる大切なスキルとも言える。職員それぞれに個性があり、その個性と付き合うことで子どもたちも大人との関わり方を学んでいくはずだ。そして、社会で生きて行く力もそんなところからも育まれるのかもしれない。何もかも担任に依存し大人の指示を鵜呑みにしてよい子を装う子にだけはなって欲しくない。と同時に、私たち保育園職員が子どもたちにとって一番の「環境」である重要さを忘れてはならない。  園長 畑山玲子

2021年7月

数年前からの念願だった小川が、ついにみどり保育園のみどり広場に完成した。せせらぎの音を聴きながら流れる水を見ているだけで、不思議と心が躍ったり、逆に穏やかになったりする。小川が完成し水が流れ出したときの子ども達の歓声は、きっと近所の皆さんにも聞こえたのではないかと思う。小川と言っても巾は広いところで1メートル位。水深はせいぜい3センチくらいだが、安全と衛生面には十分に気をつけながら水の不思議さに気づかせていきたい。小川のそばの3段の砂場も水場が近くなったことでより生きてくるに違いない。砂は水を含ませることによって固まったり、水の入れ具合でお総菜やお菓子など、何にでも見立てられる「水育」の最高のツールになる。大小や長さの違う筒を準備しようものなら、きっと友だちと協力しながらトンネルや水路作りも始まることだろう。変化を予測して、確かめてみて、またやってみてと、砂遊びの魅力は無限に広がるに違いない。本格的な暑さの前に、園庭の駐車場近くの日よけを三段の砂場への移動も完了。 さぁ!思う存分水の不思議さや砂の感触に触れて下さい。遊んだあとのシャワーは、先生達がお手伝いを買って出るからね。     

         園長 畑山玲子

2021年8月

コロナウイルス感染予防から昨年は規模を縮小して行われた「みどりまつり」だが、今年は正しい怖さがわかって来ているため、まずは飲食のコーナーを無くし、感染予防に気をつけながら思い切って「みどりひろば」で開催した。個別のご招待はせず、小学校・中学校・ぷれっそにポスターを貼らせてもらっただけのお知らせ。おそらく今年は来園者も少ないはずと見込みながらも、主任が万が一に備えうちわやお土産の花火などを多めに準備した。一夏の思い出にと、ステージ部門は民謡の上手な雄征くんのおばあちゃん・中学校のブラスバンドそして秋田市からのコーラスの皆さんにお願いした。  さて当日。予想は見事にはずれ、驚いたことに例年以上に沢山の来園数で嬉しい悲鳴をあげた。特に小学生・中学生はみどり保育園卒園生以外の子も多く、特設おばけ屋敷や新しい小川、そして木製遊具で十分に楽しんでくれた。もちろんみどり保育園の子どもたちも大喜び!! 中学生は人手不足の私たちのお手伝いも買って出てくれた。園児は19名。お客さんは250名以上。その光景は東由利の子どもたちが一堂に会したお祭りのように見え「みどりまつり」がこの地域に必要とされている事を実感した。社会福祉法人が求められている地域に向けての「地域における公益的な取り組み」が、まさに受ける側と提供する側の思いが一つになったことを実感し、この上ない喜びに浸ったひとときだった。   園長 畑山玲子

2021年9月

まさかの感染拡大。登園を控えるように保護者へ連絡してとの市からの要請は、長年この世界にいる私も記憶が無い。やむなく運動会・親子登山・祖父母参観も中止とさせてもらった。子どもだけの運動会をビデオ撮影し、DVDにて成長を見てもらうことにした。新たな体験として、収穫から米になるまでの過程を広場にできあがった本物の稲架(はさ)掛けにて挑戦。遠目では見ることがあっても子どもが触れる機会が無くなってしまった昔ながらの当たり前の風景。稲架掛けの発案から24時間後には立派な稲架がもう組みあがった。ほだ木とそれ用の紐の無償提供、農協の方々・地域の方々の暖かいご好意により、発案からして24時間後には立派な稲架ができあがった。稲は近所の農家さんから戴く手はずも整った。さぁて、みどり保育園の子ども達のこと、きっとまずは登って遊ぶはず。稲は一束ずつ子ども達が田んぼから担いで持って来ることに。乾燥の様子を毎日手にとって見られる喜び。ちょっと味見もしちゃう?乾燥後の脱穀や籾すりなどの過程もできる限り見せてもらいたい。脱穀後のわらの山登りも体験させたい。そのあとのチカチカ感だって、ぜひ。お米を炊くのはお手のもの。縁側に備え付けのストーブで羽釜で炊きましょう。自身の幼少期の思い出と共に、子ども達への体験に思いを馳せているみどり保育園職員達です。まさに園目標「ここに生まれてよかった~本物の自然の中でたくましく育て~」の一環です。                  園長 畑山玲子

2021年10月

急遽行うことになった稲のはさ掛け体験は、地域のお母さんのお手伝いを受けながらも学童職員や20歳代や30歳代の若い職員まで鎌での稲刈りを体験して、子どもにとってはもちろんのこと、私たち大人も廃れゆく文化に触れた良い機会になった。すでに「来年もやろうね!!」と大人達が盛り上がっている。でも子どもをそっちのけでは決して無い。この大人の盛り上がりが子ども達のやる気や興味を育てているのだ。大人が刈り取ってわらで束ねた稲束を、子ども達は一束ずつ抱えて園に持ち帰った。その道中のこと、一台の老人ホームの送迎車に出会った。思わずスピードを緩めてくれた運転手さん。車内のおばあちゃん達もみんな優しい笑顔で子ども達の様子を愛でていた。

最近は、はさの最上段までに登ろうが、あまり驚かなくなってきた保護者の皆さんや地域の皆さん。私たちも安全に遊べるように下に堅いものが無いか、子ども同士のトラブルにて思わぬ事故に発展しないか十分に目と心を子ども達に向けて気をつけている。 そんな中、朝送ってきてくれた一人のおばあちゃんが「さあ、今日は何に挑戦するのかな?」とカバンを所定のかごに入れる時間も惜しむように園庭での遊びに駆け出す3歳のお孫さんの背中に、そんな優しい言葉を掛けていた。だから子ども達も安心して様々なことに挑戦できるのです。そして、まっすぐ育っていくのです。

                             園長 畑山玲子

2021年11月

都会の園児数の多い教育・保育施設でここ近年3歳児以上児は敢えて年齢の枠を取り払い入り交じっての園生活を営む施設が注目されてきている。ねらいはみどり保育園がかねてから普通に行われている「大きい子は小さい子との関わりの中で、面倒見ながら教えるということで自身が学んで行く」「小さい子は大きい子のやることにあこがれ、ああなりたいと真似る模倣同期で育っていく」。 かつては地域の中でどこでも見られた生きる力の育成。今は都会でも、そして過疎地のここでも大事にされてきている「社会で生き抜く力の育ち」。 東由利は更に残念ながら地域住民も減りつつある現実の中、この地域に一つだけになる保育園に課せられるものは上記の他に多岐に渡る。  いま二つの保育園の話し合いは第2ステージに進んだ。これからこの施設をどう活用していくか。今までの「地域」の概念を東由利全体と捉え、子どもはもちろんのこと、保護者も地域の皆さんもこの場所で一緒に喜び合える施設を目指さなければならない。間もなく支所便りと共に配布される用紙にて皆さんのご意見を伺う計画でいるが、園児の家族としての思い、地域住民としての思いをぜひお知らせいただき、今までの保育園から更にみんなが憩い、生きる喜びを抱けるような、そんな保育施設になりたいと、両園で話し合っている最中だ。      園長 畑山玲子

2021年12月

11月27日(土)に行われた「たのしみ会」という名の発表会。どのクラスも日頃の保育が現れたシーンが沢山あって、ご覧になった方々も楽しかったのではないでしょうか。その中でわかりやすいシーンは1・2歳児の劇遊び「大きなかぶ」にあった。抜けた大きなかぶをどうする?と投げがけた言葉に「ほうちょうで切る」と言ったかと思ったら急いで部屋まで走って行って包丁を持ってきた2歳児。「切ったカブをどうやって食べる?」と聞かれて「お皿で」と答えた1歳児も2歳児をまねてかお皿を取りに部屋まで駆けて行って、微笑ましい笑いを誘った。もちろん想定外。その中で「取りに行って来て」の担任の指示も、「行ってきていい?」と聞く子もいない。日頃、自分の考えを認めてくれることを知っている子ども側と、子どもたちのやろうとすることを理解し見守っている大人側の信頼関係が合致している証拠だ。上手な発表が目的ではないので、日頃の保育をこんなシーンでご覧いただけたことに喜びを感じた。終盤のおじいちゃんおばあちゃんたちの職人芸に近い「繩ない」にも感動した。新米の稲わらで作る冬の間の大切な作業。この地でずっと引き継がれてきたこの本物の文化を、今度は私たちが継承しなければならないと心から思ったシーンだった。                          

園長 畑山玲子

2022年1月

統合を視野に入れての保育計画立案にあたり、秋田県ではその道に詳しい元ゆり支援学校校長で今は認定こども園にお勤めの新目基先生から教わるために、両園の園長・主任4人で秋田市の土崎にある認定こども園に出向き200名以上が生活する保育を見せてもらった。規模の大きさに圧倒されながら、にもかかわらず一人一人の育ちを保証するその保育には学ぶことが多かった。私たちの保育を振り返ると、様々な経験の積み重ねで育てる当園ではあるが、溢れる自然環境を生かし切れず取組も中途半端だったことにも気づいた。もったいないことをしている。その一つが稲作への取組。その園は種まきから収穫の過程、その後の脱穀と精米に挑み結果失敗。しかし失敗したことでお米の大切さに気付いたという。藁の活用においても思いあぐねるこちらの園と違い年度初めの計画通り正月の締め飾りを作る準備中とか。ねらいを定めての計画の立案は、どんな状況になっても子どもの育ちに繋げられる重要な鍵になる。  この度の施設の統合も同じだ。東由利における教育・保育の到達目標をきちんと定めて進まなければならないし、そのためには多くの皆さんから教わりながら進めることの重要さも、新目先生から気づかせてもらった。令和4年は地域の皆さんと話し合いながら、保育園を核にして「元気な東由利」のために頑張ることを誓いたい。今年もよろしくお願い致します。 園長 畑山玲子

2022年2月

時々職員に「記憶ではなく記録で判断して」と伝えることがあるが、実は一番は自分に言い聞かせていることである。
今年度も残すところ2ヶ月となった。遊戯室の壁に貼られている今年度初めに撮影した子ども達の顔写真は一様に幼くて、この10ヶ月間の経過を物語っているが、その成長の過程を詳細に頭に留めておくことはよほどの達人で無ければ不可能だ。そのためにあるのが日々の記録の「保育日誌」。 この度主任を中心に議論し保育日誌をより充実したものにする試みとして、個々の記録の羅列からエピソード記述に形式を変えてみた。とたんに個々の記録が明確になったのに併せ、その日の保育の目的やねらい、そして担任の願いや今後の見通しまで映像を見ているがごとく理解できて、驚くほど充実した内容の日誌になった。実際に保育に参加しなくても子ども達の生き生きした生活が手に取るように見える。『日誌が息をしている』ことを肌で感じ、成長の確認をする際に大いに役立つだろうと実感する。
行事立案の際のあるあるで、昨年はどうしたっけ?と話し合う際にどうもかみ合わないときがある。検証するとAは昨年の記憶、Bは一昨年を昨年と間違え、そして私と来たら数年前の記憶が昨年だと勘違いし、もう、笑うしかない。やっぱり「記憶よりも記録」が大事であることを痛感。 園長 畑山玲子

2022年3月

タレントの吉川ひなのさんは3児のママ。長女のおむつかぶれがひどかったことから、2人目から「おむつ無し育児」を実践。そこでおむつは“汚されるのが嫌”という『大人の都合』ではかせるものだと気づいたそうだ。おむつに垂れ流しOK、そしていきなり本日から「さあ、おまるに」と座らせられる子どもの気持ちにも添って考えたそうだ。そして見事に歩き初めの頃にはトイレで排泄の習慣が身に付けられたとか。その方法には賛否両論あるし、もちろん時間と心にゆとりが無いとうまくいかない事と想像する。  
ただ、今年度の保育園運営を振り返る視点の一つとしては『大人の都合』は大きなポイントとなる。「大人主導と子ども主体」と併せ、振り返って見るときのキーワードに加えるべき言葉だと思う。当たり前に行われている昼寝に関しては、実はすでに検討に入っている。『大人の都合』から見たら昼寝の時間に事務仕事ができる利点はある。しかし脳科学から見たら3歳以上は昼寝不用説が大きい。ただ、休息は必要。ではその方法は?と職員一同で検証しつつ、生活の『当たり前』が子ども達にとって『大人の都合』になっていないかを探り、次年度のより豊かな日々につなげていきたい。まずは合併・統合、そしてコロナと大波の中ではあるが、今年度も大きな事故が無かったことに、皆さんに感謝の気持ちでいっぱいである。 園長 畑山玲子

子どもたちをみつめて ー2020年ー

2020年4月

園だより 4月 畑山

 縁側を覆っていたブルーシートも取り除かれ、まだやや冷たさの残る春の風がちょっとだけ開け放された窓から新しい風を運んでくれる。6名の卒園児が元気に羽ばたき、その後定員を20名に下げたみどり保育園だが、新しく入園した2名を迎え21名で元気にスタートした。人数が少ない分、きめ細かな保育が出来ることだろう。

 進化しつつある「見守る保育」は、「見ているだけ」ではなく子どもが食いつくように遊びを仕掛けていく保育も加わってきた。子ども達の心や意欲や好奇心や探求心をくすぐる保育は何か。子どもたちがやり切った満足に浸りそれが次の挑戦へと結びつく、自己肯定感に溢れる保育とは何か。遊びの空間としては他に類を見ない園内外の環境の中で、保護者の皆様と共に子育てのお手伝いが出来ることに喜びを感じている。ご家庭では今まで通り十分な愛情でふんわりと包んであげてほしいものです。令和2年度、コロナウイルス感染症に気を配りながらも、参観日も楽しんで行きましょう。みどり学童クラブも同じように、様々な体験を提供したいものです。1年間、よろしくお願いします。    園長 畑山玲子

2020年5月

 子どもたちをどう守ったらいいのか。 新しい恐怖に立ち向かう専門家のコメントを見ながら、まさかの著名人の悲しいお別れを目の当たりにしながら、毎日の国や県や市からの沢山の通達を読みながら不安な思いは募るばかりだ。休校になり、それでもここが最後の砦のごとく学童保育の利用は可能で、園児と学童との接触は「あり」で園外の人との触れあいは控えるように園外での散歩は「なし」で、毎日生活を共にする保護者も園内には入られず・・・、何だか矛盾だらけの安全対策にほとほと考えさせられてしまう。この一つ一つが果たして正しいのかどうか、今は考えている余裕が無いのでこのコロナ禍が無事に過ぎ去った後に、ぜひ思い出話としてふり返りたいものだ。
3密を避けるための工夫とはいえ縁側やみどり広場からはいつも通り全身を使って遊び回る嬉々とした子ども達の声が聞こえてくる。向山には昨年よりもさらに増した水仙の群生が見え、ヒバリのさえずりもいつも通り騒がしいほどだ。八重桜も咲きそうだ。春爛漫近し。 それらを五感で感じられる開放的な縁側が、まさに豪雪以外の「災害」に十分役立っていてありがたい。 園長 畑山玲子

2020年6月

5月25日に内閣府から提示されている保育園での新しい生活様式の中には「遊びたくなる拠点の分散」「子ども同士が向かい合わないような遊具の工夫」「子ども同士の接触を減らす遊びの工夫」「歌うときは一人ずつの間隔を空け人がいる方に口が向かないように教える」「登降園時は保護者の密接を避ける工夫を」「保護者への連絡は口頭ではなく掲示板等で」など、無理難題ばかりが盛り込まれている。しかしみどり保育園では手始めに朝夕のお子さんの受け渡しをそよ風が心地よい縁側で行うようにしてみた。これが意外と良い!! 天気の悪い日は玄関、お天気の良い日は縁側、朝と帰りの受け渡しの場所が異なる日があるなど、保護者の皆様には大変な混乱を強いているものの、これがすんなり遊びに入れ、泣かない。今まで考えもしないで行っていた「あたり前」が、実は実態に合っていない事が沢山あることに、今回のコロナ対応で気づかせられている。保育関係も例外に漏れず外部の研修が軒並み中止になっているが、今まで学んできたことをベースに園内研修を充実させるのが、まさに今なのだと実感する。悲観ばかりせず、子どもたちに『本当に必要なもの』を全職員で模索し試行錯誤していく、新しい感覚の日々にしたいものだ。 園長 畑山玲子
 

2020年7月

主に数字とのにらめっこの決算事務も華僑を迎え、何年たっても慣れない事務作業に辟易する私の頭にとって、格好のストレス解消が二つある。一つは子どもたちが自ら遊び込むはつらつとした姿を見ること。何か新しいことに挑戦したり、好きな虫探しに没頭したり、自分だけの居場所を見つける姿を見ると実に癒される。やりたい事が無い俗に言う「さまよう子」がほぼいないのがみどり保育園の特徴だが、朝の登園時に一緒に来たお母さんを振り向きもせず大好きな場所に走っていく1歳児の姿などを見ると“やった!”と小躍りしたくなる。 そして二つ目はほぼ毎日更新のホームページ。なかなか見えにくい保育の様子が、添えられたメッセージで手にとるように理解できる。朝の打合せで各担任より出される計画で本日の予定を確認しあうのだが、その後の結果がホームページにてちゃんと見えるのだ。外部への公開にとどまらず園内では職員間の思いが共通理解できるのが、何よりもすばらしい。顔写真を載せることへの承諾は得ているが、個人情報に気をつけながら子ども達の成長をも公開し続けていきたい。この園の保育の根幹をきちんと理解している担当の副主任に感謝です。 さぁて子どもたちからもらったパワーをエネルギーに、もうひとがんばり、数字の世界と向き合いましょうか。
                              園長 畑山玲子

2020年8月

テレワークには無縁の保育界にも、ついにウェブ会議が誕生した。パソコン画面に参加者の面々が映し出され、多少の緊張を覚えつつもそれなりに会議は進む。秋田市までの移動の時間と距離を思うと、なんと今時だろうと感心してしまう。全県各地の保育園長との会議中に子ども達のはしゃぐ声が遠くから聞こえ、硬い会議もどことなく気持ちを和ませてくれるのはさすがに保育界。しかし反面、ウエブ会議で重要になってくるのが言葉の一言一言の重要さだ。意見があるならはっきりときちんとした言葉で話さないと皆さんに伝わりにくい。一同に会しての会ではなんとなくその場の参加者の表情や雰囲気で進んでいくのに対し、リモートではそうは行かない。同感か、反論があるのかも、人数が多くなるほど分かりづらい。苦肉の策として太いペンで○印を書いた紙を掲げて賛成の意思表示をしたりもしている。奥ゆかしさは無用の世界だ。
子どもたちはこれからどんな社会の中で生きていくのだろうか。思いがけないコロナ禍のおかげで生活は一変した。せめて私たちは『社会の中で生きぬく力』をつけてやりたい。そのひとつの方法として五味太郎の『ことばがいっぱい~言葉図鑑』を大いに活用し始めた。言葉で伝える力をつけるには、そばにいる私達大人の正しい言葉使いが図鑑よりも更に必須であることも、もちろんのこと。園長 畑山玲子
 

2020年9月

先日の学童職員会議にて気になる情報を得た。発音にちょっとだけ特徴のあるAに対して執拗に正させようとする周りB達の存在。B達は決して悪気でないものの、正されるAの気持ちの萎縮やそれを糸口にいじめに発展しないかとの懸念。学童職員の子を思う気持ちが良く理解できただけに、自分なりに思うことを伝えさせてもらった。正解かどうかは、わからないけれど。
ポイントは大人側の「子ども自身の努力で正せる事か否か」の見極め。発音に限らず容姿や運動能力など「努力では正せない事」に対して1対数人で議論する姿を目にするが、そばにいる私たちの務めは裁判のように良し悪しを伝えることではなく、もっと広い目で見られるように進言することではないだろか、と。前述の発音に特化してのあくまでも一例として、世界に目を向けさせる方法はどうか。 《日本は「こんにちは」アメリカは「ハロー」韓国だって中国だってみんな言葉は違う。「ハロー」の発音だってその地方によって或いはその人によって微妙に違うと思う。第1にAの話すことはみんなが理解できているし、全く問題にすることではないよ》-と。 一方で、ゲームや生活の中のルール違反に関しては「努力で正せる事」なので、子供同士の議論をそばで見守るだけでいい、と。
今注文中の6体の人形には黒人の人形が2体あります。肌や瞳の色の違いで様々な人種を身近に感じてもらい、広い考えをもってもらいたいのが、私達のねらいです。
 
園長 畑山玲子
 

2020年10月

先日の「みどり会議」のこと。収穫したさつま芋のメニューを話し合った折、子ども達の発案で『それぞれがメニューを考え、それを全員で作る』ことになった。給食の阿曽先生との相談が必須につき、家族のアドバイスを聞きながら各々がメニューを紙に書いて持ち寄ることになった。「明日までの宿題」として。さて、翌日のこと、あんなに嬉々として話していたにも関わらず、実行したのはたった一人Nちゃんだけ。他5人は、悪びれた様子も見せず、Nちゃんや協力してくれる阿曽先生へのお詫び、話し合いが出来ない残念さ、そんなものが微塵も感じられない。子どもとはいえここは社会のど真ん中。これは困った。そこで敢えてNちゃんと阿曽先生・私の3人だけで話し合うことを提案。「約束違反の皆さんはお昼ねをどうぞ」のちょっと突き放した言葉を添えて。とたんに泣く&文句を言うの大騒ぎ。しめた!こんな反応、今まで見たことがないぞ。その後、かくかくしかじかありまして、2日間の猶予つきに収まったが、どうかな?みんなの足並みが揃うならば、10月に入ってからのさつま芋料理は、さぞかし美味しく仕上がることでしょう。
園長 畑山玲子

2020年11月

子どもに対する大人側の迷惑行為って、園内でも起こりがち。子どもが驚くほど真剣に遊び込んでいる時は、集中力や思考力、観察力や記憶力、構成力や想像力が育つ瞬間なので、やたらに声を掛けずに見守ることにしていて、遊びがとぎれたときに要件を伝えることにしているが、でも、ついついそんな時に「○○ちゃん靴出しっぱなしだったよ」なんて言ってしまう自分がいて反省。えっ、それのどこがいけないの?と思われるかもしれないが、これが「遊びを仕事」としている子ども達にとっては「いい迷惑」だろう。私たち大人も仮に事務室で仕事中などに子どもがそばに来て騒いだりしたら「ちよっとぉ~!静かにしてくれない?いま仕事中なんだから!もう、迷惑!」と言ってしまいそう。そこは「静かにしてよ!」と大人の権力を振りかざし、突き詰めたら子どもへのパワハラと言わざるを得ない状況にもなりうる。  
それとはちょっと違うが子どもへの迷惑行為の代表が誰もが使う柔軟剤の臭い。これも立派に「スルメ(臭い)ハラスメント」と名付けられ、なんと数あるハラスメントの上位6位に入っている迷惑行為。そばにいて体調を崩してしまうひともいるほど柔軟剤は気をつけたい。しかも本人は気づかない場合も多いので、これからの季節、特に屋内の密閉空間で過ごすことが多いだけに、コロナとともに柔軟剤の「スルメ(臭い)ハラスメント」は、私も気をつけなくっちゃ。  園長 畑山玲子

2020年12月

                  「ローカルルール」
定員を下げたことが保育そのものを考えるきっかけになっている。園児数減に反比例して、大人の目と手がますます増えた事で起こる「保育という名のおせっかい」が増えるのではないかな?しかし今のところその都度気づいたケースについて話し合うことで回避できている。その例が裸足保育においての自宅から履いてきた靴下の置き場だ。妙なのは、靴棚に設置した「牛乳パック利用の靴下入れ」の存在。確かに忘れ物予防にも一役買っていた。しかしその置き場はみどり保育園だけの「ローカルルール」だ。同じように裸足で遊ぶ公共の場などに家族で行ったときに、子ども達は靴下をどうしているのだろうか。連れて行った大人が持っていてくれるのが関の山、かな?そこである日から、脱いだ靴下は靴かカバンに入れることを子ども達に提案している。これならどこにお出かけしても通用する。
どうでもいいよそれくらい、と思われるかもしれないが、生活のルールのポイントを「公共の場でも通用する」とすることで、変なローカルルールが減り、生きる力の育成にも繋げられていることを確信。えっ?園内は裸足で過ごすということもローカルルール?「第二の心臓」とも言われている足の裏を刺激することで様々な感覚器官や脳を刺激することがわかっているので、この生活は真冬でも続けさせてもらうことにして、他のローカルルールはみんなで見直していかなければ。  園長 畑山玲子

2021年1月

「手仕事」

哲学博士のシュタイナーが考案した「シュタイナー教育」。「手仕事こそが知性」というシュタイナーの言葉通り「手仕事遊び」には手先の器用さだけでなく、集中力、知的能力の土台、そして一端始めたら途中で止めてはいけないというルールによって、忍耐力も身に付く。つかむ、ちぎる、にぎる、ねじる、折るなど、巧みに指先を使う能力は、スマホの普及によって現代人が失いつつあると言われているが、それでも、幼少期からきちんと手仕事の体験を積むことで、常に創造的に何かを生み出せる人間でいられると思う。そしてそれは確実に生きる力に繋がるはず。

みどり保育園では毎年雪に閉ざされるこの時期に、沢山の手仕事遊びを準備している。葉書より少し小ぶりの紙に刺繍糸で刺繍していく紙刺繍、映画「君の名は」でお馴染みの組紐、毛糸で編む指編み、ビーズ、そして年長児だけが取り組む“権利”のある機織りなど。どれも挫折しそうになる気持ちを自身でコントロールして、気長に何日も掛けて完成を迎えなければならないが、苦労するほど大きな達成感に繋がっていくのだ。豪雪の兆しが見えるこの冬は、じっくりゆっくり、職員も一緒に手仕事遊びに取り組みたいものだ。その成果をぜひ玄関に飾ってお見せしましょうか。出来映えの良さではなく、取り組み続けた証を、ぜひ評価してもらいたいです。 

 園長 畑山玲子

 

2021年2月

こんなに雪があるのに今年の雪は変な雪質」で、みどり保育園が毎年取り組んでいるダイナミックな雪遊びに子どもたちを誘うことができず、とまどう毎日が続く。いつもなら新雪をこいで遠くの土手まで出かけそり滑りをするなど、園の周りすべてが園庭のごとく走り回ったり転げたり、存分に雪に触れられるのに、今年は都会っ子のように園舎内にとどまっている。急に降った雪のためなのか、ぬかるみも激しく、二段の塔やボルダリングの下も危ない。第一に新雪の中で転んだ小さな子が埋もれそうで危険だ。転んで起きあがれずもがく姿を想像するだけで怖い。ダイナミックな遊びでも安全確保が基本なので、無理しないことに決めた。弱腰に捉えられそうだが、根底には年末年始のかつて味わったことのない大雪の恐怖が脳裏をかすめ続けているからだ。  1月4日午後1時半頃。聞いたことのない轟音を伴って、玉米会館側の屋根の雪が一気に落ち、瞬時に大山が出現した。地面からの震動が伝わり園舎が壊れそうな恐怖を感じた。普段から子どもたちが立ち入る場所ではないものの登園児がいなかったことにひとまず胸をなで下ろしつつ道路に出て全景を確認したところ、なんと、築34年間数々の落雪風雪に耐え続けてくれたフェンスが、20メートルほどに渡って倒壊しているではありませんか!未だ雪に阻まれ被害の全容は明らかになっていないものの、まずは人的被害がなかったことに安堵しつつ、自然の怖さをもろに感じている。

2021年3月

どうせこの地には無縁と、最初は達観視していた新型コロナウイルス感染症。振り返ると、この過疎地にあるこんな小さな保育園でさえとても振り回された1年だった。しかし、地域の皆さんとの体験を積む中でたくましい気持ちや豊かな心を育てたいという思いを貫き、今年度は「地域の皆さん」の代わりに職員が大奮闘した。出来ないと嘆くのでは無く「やる!」を前提に。 寅田さんとの貴重な自然体験はお休みしたが、広い園庭と木々や畑と隣の田んぼの実り、そして土手の水辺や虫等を利用して、十分に興味をかき立てさせた。笹巻き・ほの葉ご飯は今まで教わって来たことを、職員が代わってちゃんと伝えられた。縁側を利用した苦肉の策の朝と帰りの受け渡しは、コロナ対策以上に、子どもたちの遊び時間が増えるという利点に結びついた。保護者は園舎に入れない矛盾だらけの対策は、正しく怖がりながら今後どんどん見直していきたい。園内は変わらずに子どもの育ちに繋がる世界が広がる。規律ある中にも自由な発想を重んじてくれる職員と共に、子どもたちの成長を確認し、次年度の保育に繋げたい。

「先生は宇宙人って存在すると思う?僕は確かにいると思っている。想像すると楽しいよね。」4歳男児の言い回しに成長を感じ嬉しい朝である。出生数の少ないこの地ではあるが、目の前のこの子たちのために必要なことを見極めて、成長のお手伝いとなるよう、みどり保育園ならではの保育を貫いていきたいと思っている。

今年度もご協力いただきありがとうございました。       園長 畑山玲子

 

子どもたちをみつめて -2019年-

2019年4月

「繋ぐ場所」
 新しく増設された縁側。いまここが子ども達の生活の新たな拠点となりつつある。朝とお昼に子ども達と共に行う拭き掃除も習慣になってきた。もう少し暖かくなったらさらに縁側は「外と内とを繋ぐ場所」のほかに「子どもと子どもを繋ぐ場所」になり、「地域と子ども達を繋ぐ場所」にもなり得そうだ。気負わず、みんながゆったりとした時間の中で交流し、いつの間にか様々な繋がりができていたことに気づく、そんな場になれたら嬉しいなと願っている。散歩の途中に立ち寄り縁側に腰掛けながら子ども達の遊びを眺められる、地域の方々にとってそんなみどり保育園になりたいと思っている。
 今年度は新入園児2名を加え園児27名、みどり学童クラブは登録児童が19名、そして職員は17名で元気にスタートした。老朽化して撤去されたブランコの代わりとして5月~7月の間に木製のブランコを作り、広場の東側には赤ちゃんでも安全なせせらぎを流し、11月には創立60周年記念式典を行います。どの事業も保護者の皆様の協力無くしてはできません。どうか子ども達と一緒に楽しみながらそれらの事業に参加していただけたらと思っている。今年度も保護者の皆様と数々の話し合いを持ちながら子ども達の成長の日々になるように努めます。今後ともよろしくお願いします。
              園長 畑山玲子
 

2019年5月

「朝のルーティン」
 新入園児は2名だけですが、担任や保育室が変わったりし子ども達なりにちょっと緊張しながら始まった4月。大きな怪我もなく無事に過ぎようとしています。そんな中、登園時の親子のやりとりが様々で、とてもおもしろい。「おもしろいなんて、園長先生、こっちの気持ちも考えて!」の声が聞こえそうですが、ある瞬間子どもの気持ちが見えて、私たちはホッとしたり残念に思ったりするのです。 置いていこうとする大人と「そう簡単には離れてやるもんか」の親子の壮絶な戦い。しかし結局は職員の手に渡ってしまうものの、案外子ども達は、お母さんが諭すように抱っこしたりなだめたり時間を掛けるよりも、あなたが大好きよと一回だけギュッとして「じゃあね!行ってきます!」といさぎよく扉をピシッと閉めてくれたほうが早く遊びに入れるようですよ。しかもそれは「あきらめ」ではなく、おそらく朝のルーティン。楽しい遊びのはじまりはじまり…のゴングのようなもの。最悪のパターンが、子どもが他に気をとられている間にそっと出て行く行為で、そこには泣かれずに済んだ親の自己満足だけが残る。かわいそうに、子どもは親がどこかに隠れていてひょっこり出てくるのではないかと期待し、どことなくそわそわの時間を過ごしてしまうのですよ。              
                                園長 畑山玲子
 

2019年6月

子どもの力を信じる」
 実はいま全国で自ら体験することでしか身につかない自制心や忍耐力、社交性や思いやり、自尊心といった「生きる力」を育むことをめあてに “森を活用した保育・幼児教育”に注目が集まっています。大型バスをチャーターしてまでも自然体験に向かう園が続出です。その点毎日が自然体験のみどり保育園は、なんと恵まれていることでしょう。折しも6月15日には親子八塩山登山がありますが、大人の関わり方が重要なポイントになります。登りは親子の中で子どもを先頭に。お父さんお母さんが守ってくれる安心感をもってぐんぐん登ることでしょう。下りの急坂は子どもの前後に大人が付く。特に前の人はお父さんがお勧め。子どもとの距離を2~3メートルほどのところをキープし、子どもが降りてくるのを待ってあげる。すると、ずっと下にゴールがある怖さが半減し、安心して急坂に挑めることでしょう。いちいち「足はカニ歩き」「ロープをつかんで」と指示をせず、子ども自身が足の運びを考えながら降りてくるのを見守りたいものです。お尻で滑ったって、後ろ向きにはいつくばって降りたって、いつも通りの子ども達の動きに任せてみてはどうでしょう。子ども達には、自分で自分を守る力が備わっているのですから。汚れてもすり切れても怒る気が起きない服装にしてあげることは、お母さん達の準備の大切なポイントですね。  
                                   園長 畑山玲子
 

2019年7月

 小雨が降りしきる梅雨空に見舞われ延期を余儀なくされた親子八塩登山。しかし楽しみが先に伸びただけと思えば、逆に3ヶ月後のたくましく成長したひまわり組6名が元気に登る姿が思い浮かぶ。毎年、八塩登山の当日、登る前に子ども達にプレゼントする虫眼鏡だが、今年は数日前に子ども達に渡した。せっかく毎日田んぼのオタマジャクシやカエルや、園庭のカタツムリを見つけては、遊びながら観察している子ども達。今がその時と思い立ち、太陽を見てはいけない理由や虫眼鏡の使い方を丁寧に教え、もう一つの約束として年下の人達に貸してはいけない(間違えた使い方をするかもしれないから)という条件付きで渡した。思惑通り年長児達はマイ虫眼鏡で小さな生き物や草花などの観察に余念がない。まだ物珍しさに合わせ年長児の特権の喜びだけで持ち歩いている子もいるものの、虫眼鏡の使い方に慣れた頃には肉眼だけでは見えない新たな発見に目を輝かせるに違いない。「えんちょうせんせい、○○はっけんしたー!!」と事務室に駆け込んでくるのを、今か今かと心待ちにしている最近の私です。 
                                   園長 畑山玲子

2019年8月

 知識も無いまま子ども達と共に意気揚々と出かけた「ハッチョウトンボ」の観察。しかしいるはずのトンボが全く見つからない。湿原を飛んでいるのはよく見るトンボと、明らかに目指すものではないがあまり見ること無い透きとおった糸トンボだけ。いないねー、とぼやきながらも帰り際にやっとそれらしきトンボを3匹見つけ、虫眼鏡で観察し、感動もせぬままその日は帰ってきた。2度目。今度は詳しく知る寅田さんの同行をいただき同じ場所へ。「赤がオス、メスが茶色っぽいですよ。いっぱいいるでしょ。」と指さす方向は、私たちの目線と違って地面すれすれの足下。トンボなら高いところを飛ぶはずと思いこんでしまっていた。湿原の背の低い草の波間に、ほんとに小さい、しかしながらちゃんとトンボの形をしたハッチョウトンボが、一生懸命生きていた。「いたー!」と虫眼鏡で拡大してみると、顔は黒の鉢巻きをしているように見えた。子ども達はトンボだけでなく、いえ、むしろトンボ以上にアカハライモリやカナヘビに夢中。私たち大人は久々に出会ったタガメや、ハラビロトンボの存在に感激した。そんな中ひとりの子がみどり保育園の保育理念をつぶやいた。「ああ、ここにうまれてよかった」って。 
                      園長 畑山 玲子

2019年9月

 運動会に向けての年長児の意気込みは、すごい。ずっと前から「お父さんと竹馬の競争するんだ」と話していた一人の男児の思いを受け、年長組の競技に加えられた。わくわくしながら広場で竹馬を操る子ども達の意気込みとは裏腹に、実は戸惑いを隠せない保護者の皆さん。種目も「お父さんと競争」ではなく「家族対抗」になったので、お母さん達も「えーっ!!」「できないよ、先生・・・」と弱腰。本当は年長児6名の中にも竹馬を苦手とする子はいる。でも夕方両親でお迎えに来てお父さんがお母さんの竹を支えて練習したり、貸し出しの竹馬でおじいちゃんおばあちゃんを交え自宅で挑戦する家族も出てきている。種目ひとつが家族の触れあいや親子の繋がりに一役買っているなら、こんな素敵なことはない。家族の楽しみ方で一緒にお出かけして共通の思い出を作ったりするものだが、それと同じくらい、親子あるいは家族で竹馬をした出来事は、子ども達の心の奥底に刻まれることでしょう。今年の運動会は「創立60周年記念事業」のひとつです。種目&パフォーマンスの中に、60年の歴史をギュッと詰め込んだ素敵な運動会になりそうです。お楽しみに。 
                                   園長 畑山玲子

2019年10月

 当初計画した『木製ブランコ作製』は、予算と日程の関係で残念ながら来年度に持ち越しになった。材料は業者さんの倉庫に眠っているので早い段階で保護者の皆さんと作りあげたいと思っている。
9月28日、山登りに打って付けの天気に恵まれた年長児親子八塩登山。日頃から挑戦意欲のある子ども達は6名とは思えない位の元気な声を山に響かせながら歩を進め、全員自分の力で登頂できた満足感を味わった。途中の景色に感嘆の声を上げる子ども達が愛おしかった。寅田さんから草花や蟻地獄を教わったり樹くんのおばあちゃんから戴いたシャボン玉で遊んだり、頂上で聞く明士くんのお父さんの八塩山の解説も新鮮だった。お父さん達から担ぎ上げてもらった水にて作ったラーメンは今年もやっぱりおいしかった。親子毎の食事風景や、山頂でも活発な子ども達の様子を見ながら、子ども達の成長を願う皆さんのご協力の暖かさに感謝の気持ちでいっぱいになった。下山中、最後尾の私はつづら折りの上から6組の親子の微笑ましい姿にしばし目を細めた。危険な場所で助け合う姿、急かさず見守る両親など、どうかこれからの子育てもがんばれと心の中でエールを贈った。 下山後に見回した園庭。ここはここで日常の面白さに溢れている。ブランコは無いけれどその不足分は様々な体験でカバーするべく、10月も頑張るぞー。まずは石窯ピザと秋刀魚の炭火焼きから!              園長 畑山玲子

2019年11月

 大物忌神社がまだ玉米小学校のグランドにあった頃も、お医者さんが三治郎先生だった頃も、歯医者さんが開業する前も、バスが走る道路が老方方面から少しずつやっと舗装された頃も、堀切橋が鉄鋼造りになった頃も、五海保から跡見坂まで一直線で結ばれた頃も、ドイツ人が設計した三階建の旧小学校が取り壊された頃も、中学校が合併し東由利中学校が誕生した頃も、玉米小学校の木造校舎が取り壊された頃も、玉米会館が完成し地域が完成のお祝いに沸き上がった頃も、R107から須郷田に通ずるパイパスが出来た頃も、湯楽里やぷれっそができ東由利で初めてパフェが食べられるようになった頃も、東由利役場庁舎が近代的になった頃も、そんなどんな時代もこの地域には子どもを思う緩やかな優しい風がそっと吹き続けていた。みどり保育園は高台からこの地に移転はしたが、地域のみなさんから守られている感覚はずっと続いている。大きな事故もなく、心からの笑い声が園内のどこからとも無く聞こえ続けるみどり保育園。今年創立60年の年を迎えた現在の子ども達と私達が、この時のこの地の記憶を心の中に刻むためにも、ささやかではあるが創立60周年記念式典をこの11月16日(土)に行う。少子化の寂しさは拭えないが、ひとり一人が驚くほど自信に満ちたたくましさに溢れる時代がこの地に訪れて欲しいなと願っています。  
                                   園長 畑山玲子

2019年12月

 60周年の足跡を無事に残せた安堵の中、年長児6名と共に理事の大場さん宅へお届け物をした時のこと。誰からともなく「牛、見せてもらえませんか?」とおねだりをするのにまずは驚く。牛舎に入ってすぐに出産が間近い2頭を紹介されると「おめでとうございます」と牛に頭を下げたHちゃんの微笑ましいこと。尻込みしながら入ったわりにすぐに牛の魅力にとりつかれエサをやり続け「かわいい」とつぶやいたIくん。柱の白墨や壁のポスターの文字が牛の名前だと気づいて、さかんに読み上げまわっていたMちゃん。耳票や塩や、子牛でも放し飼いと繋がれている違いはなぜかと疑問がいっぱいのYくん。毛や角に触らせてもらい祖父の家の牛との違いを話すMちゃん。エサが稲わらだと知りドングリ眼にしてみんなに教え、牛が舌で巻きながら食べる様子に見入っていたAくん。6人が6人とも自分の驚きや感動を表し、その思いを友達と共有する姿。「静かに」「走っちゃだめ」「並んで見て」と規制いっぱいの中では育ちにくいものが、存分に動き回れたことで心に刻み込まれたことだろう。子ども達の思いに応えてくださった大場さんの優しさに感謝すると同時に、少人数ならではの保育の重要さを確信した20分間だった。                     園長 畑山玲子

子ども達をみつめて-2018年-

社会福祉法人蔵立会 えみの森
〒015-0221
秋田県由利本荘市東由利舘合字向田76-1
TEL.0184-69-2131
FAX.0184-69-2161
・一時預かり
・学童保育
・子育て支援(ひだまりルーム)
 
 
 

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